寂寞の夜
7/19/2022
君はむかし僕の家の化石と化した倉庫にマスクもせずに入っていって
もはや使い物にならない工具の詰まった棚の上を駆けていって
そこに積もっていたありたけの埃をふたりの頭上にぶちまけては
「雪だぁ!」とはしゃいでいたね
僕らはそれから一緒になってごほっ、ごほっ、と咳をした
すぐに目が痛くなって、鼻の奥が痒くなって抜け出した
それが君について僕が一番よく覚えている
小学校生活における思い出だ
でもなんで今わざわざこんなことを持ち出したかというと
実は今こっちで雪が降ってるんだ
何年ぶりだろう
大したことはないんだけれど
君も知ってのとおり滅多にないことだから
それで調べても未だによくわからない類いの化学繊維で出来た
どこぞの安物のコートにくるまったこの身を包む雪を受けて
ああこれはなんて綺麗な埃だろう、って僕は思った
それで明日もこの雪のなか僕は仕事に往かなきゃならないんだが
それでも今んところはまだ踝にすら届かない程度の積もり具合だから
今夜は君のために一杯ひっかけてから帰ることにしたよ
それじゃ乾杯といこうか 僕の友人よ
君のしでかすことはなんでもかんでも素晴らしかった
それはまるで薔薇のように秀麗で、棘があった
でもこう言っちゃあ悪いけど、実際の雪と比べたらあの埃なんかなんでもない
ただこっちの埃はあんまりにも量が夥しくて目にも優しいもんだから
そのくせ君はもうずっとまえに遠くに行っちまったもんだから
明日はどうも自分の中にこみ上げてくる感情をうまく抑え切れそうにない
僕はたいへんな寂しさのあまりもうちょっとで埋もれてしまいそうだ